勇者シリーズに参加された経緯をお教え頂けますか。
当時のプロデューサーだった吉井(孝幸)さん(現サンライズ会長)に、玩具も売れるような企画を考えてほしいという依頼を受け、『勇者エクスカイザー』で演出等を務めた高松(信司)さんと相談して企画しました。
第1作目である『勇者エクスカイザー』が放映している段階で、スポンサーであるタカラ(現タカラトミー)さんなりに手ごたえを感じていたのか、オンエアが始まる頃にはすぐにファイバードの企画が始まっていましたね。なので、シリーズが続くことは当初から決まっていたようです。
結果的に『勇者エクスカイザー』では、子供向けの玩具の売れ行きが非常に良く、マーチャンダイジングとして大成功を収めました。最近になって『古代王者 恐竜キング』を監督した際に改めて調べましたが、本当にすごい額でした(笑)
そうして「勇者シリーズ」は継続したわけですが、当時の吉井さんの考えに、「シリーズものの監督は3本まで」という方針がありましたので、ファイバード、ダ・ガーンも、という事になりました。
作品のコンセプトをお教え頂けますか。
シリーズのコンセプトとしては、「日常」と「非日常」の対比を意識しましたね。
ロボットもののアニメなので、味方のロボットが敵を倒すというのが基本なのですが、
ロボットの戦闘シーンばかりを描写したのでは、話が単調になってしまうんです。
昔の怪獣映画って、「逃げ惑う人間たち」みたいなものもしっかり描かれていて、
その人々と怪獣の大きさの対比によって、怪獣のすごさなどが強調されていたように思うんです。
だからこそ、話にスケール感を持たせるために、あえて子供達の「日常」の描写にもこだわりました。
合わせて子供達の目線も意識する事で、「日常」の中で子供達に作品を身近に感じてもらい、
「もしかしたら本当に起こるかも」みたいに思ってもらいたかったんですよ。
当時こだわった点はどこですか?まずはファイバードから。
玩具展開を意識した子供向けの作品を作ろう、という位置づけのもと、
『勇者エクスカイザー』のマイナーチェンジという形で作っていました。
エクスカイザーでは、主役ロボット自体が「意思」だったものから、ファイバードでは「人」に意思を持たせる。
生身の人間が出ることで、子供達には「お兄さん」的な親近感を持ってもらいたかった。
だから火鳥君の描写には色々こだわりました。
「火鳥さんは皆が知らない事を知っている」と子供たちに思ってもらえるようにね。
あとは、キャラクターデザインの平岡君の画はかわいらしいから、今回は変わったものにしよう、
かっこいいものにしようという要望を出しましたね。
ダ・ガーンについて
3本目だから、『勇者エクスカイザー』から見ている層は成長している。
だからその成長に合わせるように、どこまで年齢層を上げられるかという事を意識しました。
対象年齢を上げるにあたり、それまで僕は考えなかったのですが、
ダ・ガーンに関しては雑誌に記事を掲載してもらおうと考えましたね。
それまでは子供向けに1話完結にしていたこともあり、あまりネタがないので雑誌は取り上げてくれなかったんです。
子供は基本的にアニメ雑誌など買いませんしね(笑)
そうした背景から、地球が意思を持っているというような設定になったりと、若干お兄ちゃん向けにしたんですよ。
あとこれは余談ですが、デ・ブッチョをどう復活させるかという時、
八つ裂きだったから8体にして復活させよう!みたいなバカなノリが多かったですね(笑)
でもバカなことでも真面目にやれば、面白いものができるという自負はありました。
改めて見てほしい所はどこですか?
まず私が見直してないですね(笑)
それは冗談ですが、両作品とも最終回が見所です。
ファイバードは、子供達の成長ですね。
火鳥君が宇宙に帰ることで、周りの子供達が人間として一回り成長する。その過程を大事に描こうと思いましたね。
ダ・ガーンは最終回の最後の曲を収めるのが大変でした。
最初に曲を頂いた際途中で編集できないような壮大なものだったので、「これはまるのか?」とかなり悩みました(笑)
でも最終回でしか使えない曲だったので、悩みに悩んで丸ごと使ったらうまくはまっちゃったんですよ。
これも巡り合わせなのかな、と。
最後にファンに
両作品とも監督として自信の持てる作品です。
その時のチームで精一杯取り組んだ、とてもいい仕事ができたと自負していて、
今見ても全く恥ずかしくない作品です。
それは、いい意味でユーザーに迎合せず、いかに喜んでもらえるかを突き詰めました結果だと思います。
最近は目先の流行とか、今週良ければいいや、と言った作品も目にします。
でもそうじゃなくて、これは5年10年経っても色あせない王道みたいな作品だと思います。
これを機会に改めて見直してほしいですね。
本日はありがとうございました。
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